
長野県上田建設事務所発注 令和4年度国補地すべり対策(大規模特定)工事 (地)沓掛 小県郡青木村 令和5年12月竣工
集水井工(Φ3.5m H=13) N=1基 集水ボーリング工 ΣL=1330m 排水ボーリング工 ΣL=65.4m


長野県小県郡青木村の沓掛地区は、村の南部に位置する山間の地域です。青木村全体の面積の約8割は山林で平地が少なく、標高500~850mの範囲に12の集落が点在しています。沓掛地区も急峻な地形の中に農地と集落が広がり、南側の山々から流れ出す沓掛川が地区を潤しています。この沓掛川は村中央部で田沢川と合流して浦野川となり、さらに東へ流れて上田市内で千曲川に注いでいます。気候風土を活かした農業が盛んで、コメのほかシイタケやエノキタケといったキノコ類、リンゴ・ブドウ・ウメなどの果樹、トルコギキョウに代表される花卉栽培が地域の産業の中心です。こうした山あいの農村では昔ながらの共同体の営みが息づいており、豊かな自然に囲まれた田園風景が広がっています。
沓掛地区はまた、古くから交通と湯治の要衝としての歴史も有しています。平安時代には当地で温泉が開かれ、その後は湯治場として栄えました。江戸時代になると松本と上田を結ぶ保福寺峠経由の街道沿いに位置したことから、沓掛温泉の周辺には狭い街道沿いに多くの旅籠や宿屋が立ち並び、旅人で賑わいました。当時の沓掛温泉は「浦野の湯」とも呼ばれ、眼病平癒の伝説で知られる薬師堂も建立されるなど名湯として知られていました。時代の移り変わりの中で温泉街は縮小しましたが、現在でも2軒の旅館と日帰り入浴施設、共同浴場がひっそりと営業を続けており、地域住民や訪問者に親しまれています。豊かな温泉と歴史ある街道文化を背景に、沓掛地区は長年にわたり農業と交流の村としての伝統を育んできたのです。
国補地すべり対策工事(地)沓掛の概要
こうした山間の沓掛地区ですが、近年の豪雨により大規模な地すべり災害に見舞われました。令和元年(2019年)10月の東日本台風(台風19号)による豪雨で斜面が崩れ、長さ270m・幅170mにわたる地すべりが発生しています。この地すべりにより地区内の県道(主要地方道丸子信州新線)や市道が寸断され、18戸の民家と一級河川・相染川にも被害のおそれが生じました。現場では路肩や斜面が大きく崩落し、一時は道路が全面通行止めとなる深刻な状況でした。そこで地域の安全を確保し生活道路を復旧するため、長野県上田建設事務所は国の補助を受けて大規模な地すべり防止対策事業に着手しました。本工事(令和4年度 国補地すべり対策〈大規模特定〉工事(地)沓掛)では、斜面の安定化と再崩壊防止を目的に以下の対策工を実施しています。
•集水井工:直径3.5m、深さ13mの大型の集水井戸を1基設置し、地下水を集中的に集めて排水する施設を構築。
•集水ボーリング工:斜面内部に水抜き孔を多数穿設し、総延長約1.3km(1270m)のボーリングを行いました。これらの横向きの集水ボーリング孔によって地下水を井戸内に誘導します。
•排水ボーリング工:集水井に溜まった水を安全に排出するための水抜き孔を設け、総延長約65mの排水ボーリングを施工しました。井戸に集めた地下水を斜面外へ導き、速やかに流下させます。
地下水排除効果により斜面の移動は抑制され、崩壊の再発リスクは大幅に低減されました。これにより、沓掛地区の住民の皆さんは再び安心して日常生活を送ることができるようになり、貴重な農地や道路インフラも保全されています。長年暮らしを支えてきた美しい山あいの集落を守るための本工事は、地域の人々の安全・安心につながる重要な施策となりました。今後も県と関係機関はモニタリングを続け、沓掛地区の豊かな暮らしと歴史ある地域資源を将来にわたり守っていく予定です。




